2012年7月14日土曜日

Reading Text on a Smart Phone: Scrolling vs. Paging: Toward Designing Effective Electronic Manuals [Fukaya et al., 2011]

Reading Text on a Smart Phone: Scrolling vs. Paging: Toward Designing Effective Electronic Manuals [Fukaya et al., 2011] を読みました。
International Conference on User Science and Engineering (i-USEr) っていうカンファレンスの論文らしいんですが、このカンファレンスは聞いた事無いです。
2011年で第2回目という、新しい学会のようですね。

PCのモニタではスクロールレイアウト vs. ページレイアウトのどっちがいいの?という研究が数多くなされていますが、スマホを対象にした研究はまだそれほどなされていないので、そこにフォーカスした論文です。

1. Introduction

  • スクロールレイアウト/ページレイアウトに関する既存研究はPCのモニタに関するものが多いが、スマートフォンでテキストを読む場合はどうなのか
  • レシピやマニュアルなどの手続き的なテキストにはスクロールとページのどちらが適しているのか?
    • 手続き的な文書はWeb上ではありふれていて、スマホのようなデバイス上でより読まれるようになるだろう
  • 研究の目的は、スマホ上でのスクロールやページレイアウトがテキストの理解力、パフォーマンス、メンタルロードワークにどのように影響を与えるかを調査すること
  • 2つのタスクを用意
    • 記憶力タスク
    • 操作タスク
2. Experiment
  • 被験者
    • 12人の日本人(男性8人女性4人で、平均年齢35.3歳)
    • 5人はスマートフォンをほとんど使ったことがないが、7人は使い慣れている
  • 装置
    • タッチパネル式デバイスとしてiPod Touch 4Gを使用
    • テキストの表示には、スクロール式とページ式の場合にそれぞれDocument Reader と Perfect Reader Mini というアプリを使用)
    • 操作タスクでは19インチのモニタも同時に使用(後述)
  • Materials
    • 2つのタイプのテキストを使用
      • 物語
      • 手続き的なテキスト
    • 物語は1500字程度のものを4種類用意
    • 手続き的なテキストは6ステップからなるものを5つ用意
    • どちらのタイプのテキストも、スクロール式のものとページ式のものを両方用意した
  • 記憶力タスク
    • 物語を読んでもらった後に、10個の穴埋め式の設問に回答してもらう。
    • テキストの位置が記憶力に影響するかどうかを見るために、半分の設問はテキストの端(最初と最後の3行)の部分に関する設問にした
  • 操作タスク
    • iPodでマニュアルを読んでもらいながら、仮想コンソールをPCで操作してもらう
    • 操作ミスがあったら、正しく操作できるまでやり直し
  • ワークロードの評価
    • スクロール式、ページ式の双方で操作タスクを終えたあとに、NASA-TLXを用いてワークロードを評価した
  • 実験手順
    • 実験を行う前に、5分間スクロールやページめくりの練習
    • 仮想コンソールの操作の練習も7分間行う
    • ページめくりは横方向に指をスライドさせるが、スクロールは縦方向に指をスライドさせて行う
    • 記憶力タスク --> 操作タスク の順で行う
    • スクロール式とページ式を両方つかてもらうが、どちらを先に使うかは被験者を半々に分けてバイアスがかかるのを避けた
    • 操作タスク終了後、NASA-TLXを使ってワークロードを評価
3. Results
  • 一番好まれた操作方法は、物語・手続き的テキストの双方でスクロールであった
  • 記憶力タスクの結果
    • 回答の平均スコアは、ページレイアウトで読んだ場合のほうがわずかに高かった(統計的有意差あり)
    • 回答のある位置(テキストの端か中央部分か)に関してはスクロールの場合は統計的有意差はなかったが、ページの場合は有意差があった(中心部のほうがスコアが高い)
  • 操作タスクの結果
    • 仮想コンソールの操作に要した時間に有意差はなかった
    • スクロールを好む人と、ページを好む人を別々に考える
      • スクロールを好む人は、スクロールで読んでいる場合のほうがページで読んでいる場合よりも操作時間が有意に短くなっていた
      • 一方ページを好む人の場合は、ページで読んでいる場合のほうが操作時間は少し短くなっているものの、統計的に有意な差はなかった
    • 操作ミスの回数に有意差はなかった
  • メンタルワークロード
    • Mental workloadに関してはスクロールの方がかなり少なかった
    • Temporal workload, performance, effort, frustrationについてもスクロールのほうが低いスコアだった
    • Physical workloadに関してはほとんど差がなかった
4. Discussion
  • 物語に関しては理解力はページレイアウトで読んでいる場合のほうが高い
    • PCモニタの場合と同じ結果
  • 手続き的なテキストに関しては、操作ミスの回数や操作時間に差はなかったものの、スクロールを好む人だけに注目すると、スクロールレイアウトの場合に短い時間で操作を終えていた
  • メンタルワークロードは、全体的にスクロールの方が低い
  • PCモニタの場合だけでなくスマートフォンにおいても、ページレイアウトのほうが読解には向いているのではないか
  • スマホユーザにとっては、手続き的なテキストに関してはスクロールの方が効率良く読めるのではないか
5. Conclusion
  • 教科書などの記憶力を要するテキストの場合は、ページレイアウトを使ったほうが良い
  • マニュアル、レシピ、how-to本などはスクロールレイアウトのほうが、スマホに慣れ親しんでいるユーザにとっては効率良く読める

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