2012年7月13日金曜日

Scrolling Behaviour with Single- and Multi-column Layout [Braganza et al., 2009]

Scrolling Behaviour with Single- and Multi-column Layout [Braganza et al., 2009] を読みました。
以下、簡単なまとめ。結構色々端折ってます。

1. Introduction

  • デジタルデバイスで文書を作成する際に決めなければいけないものの一つに、レイアウトモデルがある。
  • レイアウトモデルは大きく分けて3つ
    • 縦スクロール (vertical scroll)
      • 現在のWebブラウザ向けの文章の大半はこれ
      • single-columnの場合には良いモデルだが、multi-columnだと次のcolumnの先頭を探すために余計なスクロールが必要となる
      • single-columnの場合でも、大きなスクリーンのスペースを活用しようと思うと、テキストの幅が広くなり読みにくい
    • ページレイアウト (page layout)
      • 文書を表示する際にページのサイズや内容を動的に決定しない限りは、電子デバイスには適していないように思える
    • 横スクロール (horizontal scroll)
      • レイアウトは動的に行われるので、ページレイアウトの際に生じる画面サイズに合っていないページサイズ等の問題が避けらる
      • --> 電子デバイスでmulti-columnの文章を読むには一番適しているように思える
  • Scrolling mechanism
    • キーボード、マウスのホイール、スクロールバー、etc...
    • 1行ごとのスクロール、連続的なスクロール、page-at-a-time movement, ページの先頭へなどの機能、etc...
  • 本論文の貢献は下記の通り
    • 縦スクロールと横スクロールのユーザビリティを調査した初めての論文
    • 各scrolling mechanismに対するユーザーパフォーマンスやリーディングパフォーマンスとの関係を調査した
    • スクロールの戦略(scrolling strategy)も調査した。そのような研究は少ない。
    • 様々なscroll mechanismをもった閲覧ツールを実装した
  • 実験の結果、被験者の1/3は横スクロールを、2/3は縦スクロールを使いやすいを感じていた
    • 縦スクロールが選ばれた理由は慣れているからなのに対し、横スクロールが選ばれた理由はスクロールのしやすさや、テキストの幅が短くなることなど
  • スクロール戦略やscroll mechanismと、快適なレイアウトには関係がある
  • 縦スクロールと横スクロールでタスクをこなす時間に有意な差はなかったが、そのうちスクロールにかけた時間に関しては横スクロールのほうが短かった
2. Related Work
  • スクロールについての先行研究との違いは主に以下の3つ
    • 横スクロールを考えた初めての研究
    • ユーザにブラウザの設定(ウィンドウサイズ、フォントサイズなど)を自由に選ばせた
    • アイトラッキングで得られたデータを使ってスクロール戦略を区別した
3. Browser
  • HTML/CSSのサブセットをサポートする独自のブラウザを実装した
  • 横スクロールレイアウトの場合は、以下のような挙動をする
    • ユーザはコラムの数をボタンで選択できる
    • ウィンドウ幅が変わった場合、コラムの幅も変わる
    • 様々なscrolling mechanismを実装 (詳細略)
      • Grab-and-drag
      • Scroll ball
      • Scrollbar
      • Keys
      • Overview
    • 上記scrolling mechanismの最後の2つに関しては、コラムの左端と画面の左端がくっつくようなシステムを採用
4. The Experiment
  • 実験概要:被験者にそれぞれ縦、横スクロールレイアウトで表示されている2つの物語を読んでもらい、さらに設問に回答してもらう。回答の際には、物語を再度読みなおすことができる。
  • 検証したい仮説
    • 横スクロールは多くの人に気に入ってもらえる
    • 横スクロールは目的の場所を探しやすい
    • 横スクロールレイアウトでの"自然な"スクロール方法は、ひとつのコラムごとにスクロールすることである
    • ユーザにとっては、スクロール回数やスクロールに費やす時間を少ないほうが良い
    • スクロール戦略の選ばれかたは、レイアウト(縦or横)によって異なる
  • 被験者は24人の大学生or院生。データ不備等の為、多少データを捨てた。
  • 使用した物語は2000語程度の英語の文章
  • 実験の前後に質問に回答してもら
    • 前の例: 週に何時間程度コンピュータのモニタで文書を読みますか?
    • 後の例: 縦スクロールと横スクロール、どちらが気に入りましたか?またその理由は?
  • 実験の流れは以下を縦と横レイアウトについて、繰り返す(順番はバイアスがかからないように被験者ごとにシャッフルされる)
    1. 操作の練習
    2. 実験の説明
    3. アイトラッカー(FaceLAB)のcalibration
    4. 物語を読む
    5. 設問に答える
5. Data Analysis and Results
5.1. Dana analysis
  • 各ユーザのログから以下のアクションの順番と所要時間を解析した
    • ブラウザのリサイズ
    • フォントサイズの変更
    • コラム数の変更(横スクロールレイアウトのみ)
    • Grab-and-dragによるスクロール
    • Scroll ballによるスクロール
    • Scrollbarによるスクロール
    • Page up, page down, スペースキーによるスクロール
    • その他のキーによるスクロール
    • Overviewによるスクロール
5.2. User preference
  • Layout model preference
    • 24人中、8人は横スクロールの方を好み、16人は縦スクロールの方を好んだ
    • 縦スクロールのほうが良かった理由としては、縦スクロールには慣れているが横スクロールには慣れていないというものが主だった
    • 3人の被験者は、横スクロールの場合視線を上下に動かさないと行けない(次のコラムに移るときなど)のが嫌だと言っていた
      • 縦スクロールの場合は、スクロールして好みの高さに読みたい文章を持ってこれる
      • 視線の移動は上下よりも左右のほうが楽?
  • Preferred scrolling mechanism
    • 使用したscrolling mechanismを分析しても、縦スクロールと横スクロールの場合で統計的に有意な差は得られなかった
    • ただし、縦スクロールの場合はscroll ballやscroll barを使う人が多かったのに対し、横スクロールでは矢印キー、scroll ball、grab&dragを使う人が多かった
    • grab-and-dragを使った人は6人中5人が縦スクロールのほうが快適だと回答。矢印キーを使った人は6人中5人が横スクロールのほうが快適だと言っている。
      • どのレイアウトが好まれるかは、使われるscroll mechanismに依存しているのではないか
5.3. Performance
  • 横スクロールのほうが少ないスクロール回数・時間だと予想していたが、 リーディング、設問への回答のどちらの場合にも、実際そうだった(統計的有意差あり)
    • その理由としては横スクロールのほうが縦スクロールよりも文書全体を表示するのに必要なスクロール量が少ないことが考えられる
  • 横スクロールの場合には、コラムが目印となって設問の回答時間が短くなる(関連箇所を探すのに要する時間が短くなる)と予想していたが、そのような結果は得られなかった
5.4. Scrolling strategies
  • スクロール戦略は、大きく分けて次の3つが観察された
    • Page: 画面に表示されているテキストを(ほとんど)全部読んでから、一画面分スクロールする
    • Continuous: 画面の中のごく限られた位置のみのテキストを読む。細かくスクロールを駆使して、読みたいテキストがその位置に来るように調整する。
    • Region: PageとContinuousの中間。ある一定の範囲(だいたい画面の半分程度)にあるテキストを読みきったら、その範囲に次のテキストが来るようにスクロールする戦略。
  • 被験者は物語を読む間に一貫した戦略を使う傾向がある(途中で戦略を変えたりしない)
  • 縦スクロールと横スクロールの場合に、似た戦略を使う傾向がある
  • それぞれの比率
    • 縦スクロール
      • page: 13%, continuous: 46%, region 31%
    • 横スクロール
      • page: 50%
      • 64%は見えてるコラムのうち幾つかを読んで、その分スクロール 
      • 一人だけcontinuous
  • 横スクロールの場合は、テキストは画面中央で読まれることが多い
  • 縦スクロールの場合は、画面の下の方で読まれることが多かったが、上から3分の1程度の箇所にもピークがあった
6. Discussion
  • 得られた所見をまとめると次の通り。
    • 被験者の1/3は横スクロールのほうが快適だと感じた。読むこと自体や設問への回答のパフォーマンスは、どちらのレイアウトでもほぼ同じだった。
    • 縦スクロールの際、46%の被験者は視線の動きが最小限で済むようなスクロール戦略を採用している。逆に、ページ全体を読んでからスクロールという戦略を採っていたのは13%しかいなかった。画面の下の方が注視されやすい。
    • 横スクロールに関しては、64%の被験者が1or2個のコラムを読んでからスクロールをしていた。表示されているコラム全部を読んでからスクロールという戦略も50%いた。画面の中央が注視されやすい。
    • 横スクロールでは、スクロールの頻度は少なく、スクロールにかける時間も少ない。縦スクロールに比べ、キーでのスクロールはよく使われるが、scroll ballやscrollbarはあまり使われない。
    • 縦スクロールで使うスクロール戦略は、レイアウトの好みに影響する(continuous scrollをする人は縦スクロールを好む)。Scrolling mechanismも同様に影響する(grab-and-dragを使う人は縦スクロールを好み、keyを使う人は横スクロールを好む)。
  • タッチスクリーン式のデバイスには、grab-and-dragを使う人に好まれる縦スクロールが適している?

画面の下の方が注視されやすいということが結構書かれていたけれど、見やすい場所って頭の高さや、画面の高さに大きく影響されると思うんです。
そのあたりの装置の配置状況などは書いてないですし、画面下が注視されやすいという点に関してはこの結果を見ただけじゃなんとも言えない気がします。

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